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斎藤篇(後)/10
そして剣心が神谷道場を出て、しばらく後。 薫たちは驚愕の報を知ることになる。 「・・・ちょっと・・・この号外って」 「大久保卿暗殺って、まじかよ」 ぐしゃりと薄い紙を握りつぶして、左之助が大きく 舌打ちした。 「厄介ね」 恵がやや蒼ざめながら呟く。 「え、何が?」 薫が不安そうに恵を見た。 「剣さんや斎藤へ、命令する立場だった人でしょ? つまり今回の京都行きと関連があるんじゃあ」 「石川県士族、とかじゃなくて?」 弥彦はぽりぽりと首筋を掻くと、 腕組みをした。 「とにかく剣心が帰ってきたら、詳しく聞かねえと!」 「見たのか、おまえ」 「・・・ああ」 ゆらゆらと紫煙を燻らせ、斎藤は剣心を見下ろした。 剣心は腕組みしながら、じっと川面を凝視している。 「大久保卿の暗殺は、志々雄の手の者だな」 「・・・ああ」 「川路が呼んでる、愚痴らせてやれ」 ざわ、と水面が揺れた。 剣心は通り過ぎる一陣の風に、瞳を閉じる。 (あなたもまだ死にたくないのなら、 志々雄さんに刃向かわない方が身のためですよ) あの声。 命を絶ったことに対して、何の躊躇いもない、声。 一刻の猶予もないのだと、思い知らされた。 じゃり、と砂を踏んで。 剣心は歩き出した。 「今夜、立つ」 そう、ひと言捨て置いて。 ―――斎藤はにやりと唇を歪めると、新しい煙草を銜えた。 ■次へ ■『東京日記』目次へ戻る TOPへ |