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斎藤篇(後)/6
やがて、待ちきれないかのように剣心に指が 巴の襟にかかった。 唾液でぬめる唇を、何度も吸い上げながら。 帯を解き着物を剥いでゆく。 その内、巴の僅かにひやりとした指先が、するりと 剣心の胸へ入り込んだ。 「な、に・・・?積極的」 掠れた息でそう問えば、巴も上擦った声で答える。 「触れたい、と思ったんです。 熱くて、わたしも呑み込んでくれそう―――」 呑み込むのはそっちのくせに。 剣心は喉だけで笑うと、再び口づけた。 有無は云わさない。 邪魔な着物を剥ぎ取って、彼女の全てに唇を落とそう。 俺を呑んで、そうして俺を忘れないように。 けれど剣心は、巴も似たようなことを考えて、 剣心の肌をまさぐるのには気づかない。 彼の匂い。 彼の汗。 彼の吐息。 引き摺られる。 後を振り返ることが出来ない。 四本の腕が蠢く。 相手を煽り、相手を牽制し、相手を抱(いだ)く。 「あ、あ、っあああっ!」 柔らかな胸と、秘部を同時に攻められて、巴の方が先に 流された。 剣心の為すがままに、身を捩り。 そしてそれが彼を煽る。 がくがくと揺さぶられながら、巴は自分の鼓動と 剣心の鼓動が重なり合う、音を聞いた。 「はぁ、あ、あうっ」 「・・・っ、巴、とも、えっ」 耳朶の裏を滑る舌も。 細いけれどき締まった肩も。 汗ばむ背中も。 柔らかな大腿を掴み抱く指も。 そうして、自分を穿ち続ける熱い熱も。 全部。 全部。 「あ、は、わたし、の・・・っ!!」 わたしだけの。 これだけは、譲れない。 何故なら、疾うにわたしは。 あなた無しでは、わたしではなくなるのだから。 ねえ、知ってた? 「巴・・・っ、もっと、いいか?」 「あ、あ、なに?」 「もっと、もっと、欲しい。 君も・・・欲しがって・・・っ」 返事の代わりに、剣心の首に腕を回して。 強く、引き寄せる。 赤い髪を、掴み引く。 首筋に、歯を立てる。 無くしたもの、失ったもの、もう元には戻らないもの。 そうして、今。 ふたりのこの腕に残ったもの。 「ん・・・ふ、あああっ!」 「・・・っ、う」 いつの間にか両の手の指を固く絡ませて。 そのまま果てを、見た。 ■次へ ■『東京日記』目次へ戻る TOPへ |