杜鵑草/7-4

震え続けていた女が、ぴたりと動きを止めた。
不審に思って剣心が彼女の顔を覗き込もうとした時。
いきなり強い力で右の二の腕を掴まれる。
「・・・?」
女がゆっくりと顔を上げた。
寒さで蒼くなった顔色。
落ちくぼみ、黒ずんだ目元。
がしっと掴まれたその指先から、 信じられないほどの力が伝わってくる。
細く尖った爪がギリギリと音を立てて喰い込むかのようだ。
一瞬息を詰め、剣心は背筋を震わせた。
女の様子が一変している。
これも―――狂った故なのか。
わなわなと震える唇が動いて、驚くほど嗄れた声を発した。

「思い知ればいい…埋めようのない空虚を。
 何をしても、何をされても癒えることのない傷を。
 一生、付き纏う、その嘆きを」
「・・・な、にを・・・」

剣心は女の指を外そうとした。
けれど強ばって上手く己の指先が動かせない。
それでもなんとか時間をかけて。
女の喰い込んだ爪を外し、指を解いた。
がくり。
途端女の全身から力が抜ける。
そのまま頭から地面へ倒れ込みそうな女を、 剣心は慌てて腕で支えた。
ほう、と一息ついて。
剣心は俯くように顔を伏せる。
「・・・・・・そう、だよな」
我が子を奪われ。
我が子を沈めれ。
嘆いて狂って彷徨って。
(けれどそれだけじゃない)
絶望と、繰り返される“何故”と、自分を責めながら 抑えきれない・・・憎悪の奔流が。
いつもいつもいつも。

絶え間なく。
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