杜鵑草/6-3

   居ない、って云ってるだろっ!」
子どものように駄々をこねる女に、剣心はつい声を荒げた。
びっくりした女は信じられないものを見たかのように、 大きく目を瞠って剣心を凝視する。
「あなたが探しているのは幻か虚構だ!
 そんな赤子は存在しない。
 いい加減目を覚ましてください・・・あなたの、お父さんは、あなたを ・・・とても心配なさってます・・・」
ゆっくりと丁寧に。
そして力強さを剣心は最後の言葉に込めた。
女の狂った心に、届くように。
あなたを、愛している家族が待っているのだと。

女の見開いた瞳の、その濁った光がぐにゃりと揺れた。
厚い水の膜が一瞬でその眼球を覆い。
忽ち溢れて、ぼたぼたと頬に零れる。
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