杜鵑草/6-1

さも面白そうに、飯塚は嗤った。
脂(やに)汚れた歯が、はっきりと覗く。
「そんなにびっくりしなさんな。
 ぐーぜん、なんだからさ、巴ちゃん」
普段の喋りと変わらない、飯塚の声。
けれどその言葉ひとつ、ひとつが。
ざわざわと巴の肌を粟立たせてゆく。
「ぐう、ぜん・・・って何が、ですか?
 あなたは“どうして”、“此処”に、来たのですか?」

問いたださねばならない。
巴は強くその衝動に駆られている。
(いやだ)
(いやだ)
彼女の心は拒否反応を示しているのに、冷静な思考の部分が それを制した。
抜刀斎の仕事。
遺された、身内。
   狂った、女。
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