杜鵑草/4-3

「昼間に簪(かんざし)売りのおじいさんがちらりと漏らしたのですけど」
女将はああ、あの老人かと心当たりのある表情(かお)をする。
人の好い老人だけどおしゃべりでねえ、と溜息を吐きながら小声で愚痴た。
今自分たちの居る寒村と比べると遥かに賑わっている界隈なのに、 人同士の繋がりが篤いことに巴は驚きながら。
再び訊いた。

「―――可哀想だ、と。
 幸せだったのに、と」

女将は巴の言葉にいちいち頷きながら「そうそう」と 肯定を声に出していた。
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