彼は、死にたかったのだ。











彼が人を守ることは、彼の呼吸のようなものだった。
・・・それが停止すれば、彼は死ぬ。



そしてその原点は『彼女』であることに。
疑う余地はわたしにはなくて。



彼の、闘い守る意味はすなわち『彼女』への。
彼の。
彼の・・・全身全霊の約束。

違えば彼の生命活動に支障をきたすほどの。







ああ、その事に。
その本質に彼は気づいているのだろうか?
・・・だから、彼は辛うじて。
これまでを生きて来れたのだ、と。



ああ、わたしには云えない。
息子の為に生きて。
わたしの為に生きて。



行かないで。





逝かないで。





ここに居て。



――――――わたしだけを、見て。








そう吐き出せたらどんなに楽になるだろう。
そう吐き出して、彼の呼吸をわたしが停めて。



そう、出来たら。
どんなに気持ち良くて。



どんなに、苦いか。











―――貴方を選んだ、苦しみが。

貴方を選んだ幸せを凌駕する。
[Next] [るろ剣 Index]