ケット・シーが脱落した。
だが、それでは終わらなかった。
暫く走り続けると、今度は臭〜い匂いが漂い始めた。
「うっ・・・!!臭いっ!!
ナナキが、鼻を地面に擦りつけて身悶えた。
「モルボルよっ!!」
いやああな顔をして、ティファが叫ぶ。
「ぐっはあ!
 臭いわ、毒されるわ、蛙にさせられるわの、あのモルボルか!?」
バレットが天を仰ぐ。
「よっしゃ!俺が行こう」
「シド・・・!!」
勇気ある彼の発言に一同がどよめいた。
ロンギヌスを握って、シドは軽く片目を瞑る。
「クラウド、エアリス、がんばれよ」

・・・ありがとう!シド!!
あんたの幸運を祈る!!
俺たちは、振り返ることもなく先へ進んだ。



お次はサボテンダーだった。
ちょこまかすばしっこい上に針千本などという不届きな攻撃をしかけてくる。
「今度はあたしね」
ぶん、とユフィが不倶戴天を振り回す。
「「ユ、ユフィ!!」」
エアリスとティファが声を揃えて心配する。
「まっかせて!
 飛び道具には慣れてるから!!」

いや、それはちょっと違うだろう、と心の中で突っ込みながら、 俺はユフィに感謝した。
「あれはねー、貴重なテトラエレメンタルに変わるのよっ!!」
にやっと笑いながら、駆けてゆく。
まったくユフィ、お前というヤツは・・・!!



「あ、あれは!!」
緑色の蛙もどきが、六匹迫ってきた。
「タッチミー・・・」
愕然とバレットが呟く。
囲まれれば、こっちはパニック状態必至だ。
「雑魚は雑魚なんだが・・・ややこしいな」
バレットが右腕のミッシングスコアをかざした。
「ようし、俺に任せろ!!撃って撃って、足止めしてやるっ!!」
「バレット・・・」
ティファが大きく頷くと、俺たちはまた先を急いだ。



グルル、と低い唸り声がして。
ナナキがはっと身を構える。
「こいつは・・・キングベヒーモスだな」
ぴくぴくと耳を動かし、前方の闇を見据える。
「・・・オイラ行くよ」
ナナキは傍に立っていたエアリスの頬をぺろりと舐めた。
「後でね、エアリス」
「うん・・・」
ナナキの首に腕を回して、頬ずりをする。
あの、なんかすごい腹が立つんですが?
―――俺たちはやはり振り返ることなく走り続けた。



どんどん悲しそうな顔になってゆくエアリスを励ましながら。
俺たちは地下深く進んでゆく。
やがて、遠い先に、きらりと光が見えた。
「あ、あれか・・・!!」
俺は慌てて腕時計を見た。
新月まであと10分・・・間に合う!!
「あと一息だ、エアリス。
 疲れただろうが、頑張ってくれ」
彼女を心配させないように、爽やかな笑顔で話し掛ける。
こくっと彼女は頷いて、そしてにっこり微笑んだ。

ぶふっ!!

あどけないその微笑みは、強烈すぎる・・・エアリス!!
(隣でティファが呆れ顔だが)
「さあ、行きま・・・」
ティファが号令をかけようとして、固まった。

ああ〜〜うああ〜〜

気味の悪い声が、あちらこちらから聞こえてくる。
ひくっとティファの顔が引きつった。
「まさか、例のゾンビ・・・?」
わらわらと不気味な奴らが湧いて出てくる。
次から次へ。
数え切れない。
「ふ・・・ふふ」
目が据わったティファが、低く笑った。
これが非常に怖かったことは、
彼女には内緒にしておこう―――
「所詮逃れられない運命なのよ」
開き直ったティファは、むんずとヴィンセントの襟首を掴んだ。
「今度ばかりは弾がもったいないなんて、つべこべ言わせないわよ!!
 きちっと片付けなさいっ!!」
びしっと告げると、ヴィンセントは複雑そうに黙り込み、 やがて徐に頷いた。
「・・・致し方ない・・・」

そうだよな・・・怒ったティファはヴィンセントでも怖ろしいよなあ。
ティファがエアリスをきゅっと抱き締め、額に軽くキスをした。
「これがミニエアリスの見納めなのね・・・辛いわ」

・・・はい?

「じゃあね、エアリス。
 すぐに再会しましょう!!
 クラウド、頼んだわよ!」
艶やかに微笑んで、ヴィンセントの首根っこを押さえながら、 ティファがゾンビの群れへ突入してゆく。
「てぃふぁあああああ!!」
泣き叫ぶエアリスを抱きかかえて、俺はひたすら走った。



やっぱこれって、クライマックスだよな?
ということは、俺にも立ちはだかる敵が・・・

「クラウドッ!!」
走りながらうっかり考え込んでいた俺の耳に、エアリスの声が響く。
「あれ・・・」
俺に抱かれたまま、エアリスは前方を指差した。
そこには。
アルテマウェポンがゆらりと全容を見せていた。
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