ゆずりは/3

「すみません、まだ越したばかりで散らかっていて。
 せっかく引っ越し祝いにきてくださったのに」
巴はまた新しく羊羹を切ると、その小皿をコトリと置いた。
うなじの辺りで括った黒髪が。
さらさらと揺れる。
「いや、やっとひとつの場所に落ち着けるようになったんだ、 なんにせよ目出度い。
 それにいきなり来た俺が悪いしな」
「いえ、そんなことは・・・」
顔を上げて、小さく首を振る彼女は。
成る程、剣心の云った通り表情豊か、ではないけれど。
その醸し出す雰囲気が甘く柔らかで、彼女の心持ちを雄弁に語っていた。
(極上だ)
比古は我知らず唇を吊り上げていた。
器用そうに見える彼の弟子は、実は異性に対しては不器用で。
しかも彼女と剣心の因縁はひと言では表せないほど、 深くて哀しいものだった。
本当に生きると云うことは。
どんでん返しの連続かもしれない。
剣心と巴は紆余曲折を経て、結ばれ。
可愛い娘までもうけた。
あの、馬鹿弟子が。
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