杜鵑草/9-1

その夜の、それ以降のことは目まぐるしく過ぎ去った。
娘を見つけてもらった父親と、その幼馴染みの 宿屋の主人は、剣心達にあれこれと礼を述べ、出来うる感謝を 探しては提案するという賑やかさだった。
元々恐縮してぎこちなかった剣心は、急用が在るとか時間がないとか、 とにかくいろいろいい訳を並べ立てて。
翌朝早く、出立することに辛うじて成功した。



まだ朝靄の濃い中を、剣心と巴は黙々と連れだって歩く。
もう少しで町を出るかという段階で、ようやく剣心が口を開いた。
「・・・疲れた」
掠れて張りのない声が、本当に疲労していることを滲ませる。
「結局一睡もなさってないでしょう?」
心なしか巴も声が一段と小さかった。
「ある程度睡眠を取らないのは、平気なんだけど。
 親切で優しくて面倒見が良くて。
 そんな人達に囲まれることが、こんなに気を遣うだなんて 思わなかったよ」
「・・・そう、ですね」
人慣れしない少年の背を、巴はまんじりと見つめた。
村の子ども達と遊んでいる時はとても自然だったのに。
彼は自分への好意を意識すると途端に不器用になってしまう。
(でも)
「それだけじゃ、ないのでしょう?」
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