杜鵑草/8-2

「これはねぇ、『杜鵑草』っていう花なの。
 ほら、この花弁が鳥の胸羽根にそっくりでしょう?」
「ああ・・・不如帰(ほととぎす)の模様だったんですね」
何かに似ていると思ったら、鋭い鳴き声を持つ夏鳥の胸の模様だ。
剣心は得心がいったように頷いた。
女はふふふ、と小さく笑うと虚ろな目をした。
「あの鳥さんはねえ、卵を他の鳥の巣に産むのよ。
 ・・・本当の卵は巣から落とされて。
 ニセモノのコドモを親鳥は育てる」
「あ―――」
ふふふ、と女はまだ笑っている。
「なあーんにも知らないで、互いを親子とか思うのかしら?
 なあーんにもなあーんにもわからずに」
ふふふ、ふふふ。
「それでも、ともに居られれば幸せだと思うのかしら?」
ふふふ、ふふふ。
「・・・あ、この花少しあげる。
 お礼」
剣心はまだ笑い続ける彼女から、一本受け取った。
「花言葉はねえ」
ふふふ、ふふふ。

「―――『永遠にあなたの、もの』」

剣心は彼女の笑いから顔を背けるように視線をそらした。
もやもやとした気持ちの悪い塊(かたまり)を、飲み下せないかのように 喉がひくつく。
・・・彼女の意味する『あなた』は誰なのだろうか?
斬り殺された夫?
引き離された息子?
殺されてしまった娘?
それとも自分を縛り付けているこの世界?

そう考えた時 ざわり、と何かかが剣心の首筋を撫であげる。
女はさも楽しそうに笑いながら。
剣心に引かれるまま、歩いている。
(俺は何か)
(何か大事なことを“視て”ないんじゃ、ないか?)
ふ、と脳裏に淋しげな瞳の巴が浮かんだ。
(何か)
(何かが)
(狂ってる、のに・・・)
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