杜鵑草/7-2

飯塚はつまらなさそうに巴の視線を受け流すと、こきこきと 首を鳴らした。
「ま、確かに俺は“奴ら”の仲間さね。
 だけど裏切り者ってのは違うぜ?
 ・・・端(はな)から間諜役だったんだからよ」
詳しく述べるのがさも面倒くさいかのように、 飯塚は投げ遣りに云い放つ。
彼のあまりに無機質な言いざまに巴は恐ろしさを覚えた。
そのまま無意識に一歩下がろうとして、その顎を素早く 飯塚に掴まれる。
「・・・っ」
「巴ちゃん、俺たちは“仲間”だ。
 仲良くやろうや」
ずい、と飯塚が顔を近づけた。
その脂(やに)臭い息に、巴の嫌悪が急速に膨らむ。
白い腕がちらりと飯塚の目の端に映った。
ばし、と夜の闇に響く音。
「・・・おお、こわっ!」
飯塚は乱暴に払われた自分の手首を大袈裟にぱたぱたと 振って見せた。
ぎゅ、と唇を噛み締めて、巴がそれを睨む。
「邪魔を・・・しないでください。
 これは、わたしの・・・わたしだけの・・・!」
わなわなと震える顎を叱咤して。
巴は告げる。
(あなたと同じにしないで)
(わたしは斬り殺されたあの人のために)
(わたしはあの人に何もしてあげられなかったから)
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