春を待ちながら・二章/5
「そういえば、つけないんだな」
「何を、ですか?」
「香油」
「・・・すずしろを抜くのに、髪油は必要ないかと」
「え?ああ、そうだ、な」
「どうしてですか?」
「特別、だから」
「?」
「君の香りだから、特別なんだ」
「それは、嬉しく思っていいのですか?」
「―――うん」
俺を甘やかし、俺を責める、特別な。
「―――母が、好んでつけていたんです」
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