一歩近づくごとに、その匂いは強くなってゆく。
風が運ぶとか、立ち籠めるとか、そういった類のものではなく。
そう、自ら望む故に・・・そっと寄り添ってくるような、そんな感覚。

ああ、何年ぶりだろう。
懐かしくて。
それでいて、いつも傍にあった、匂い。

ああ、想い出が、過去が、かつての友が。
寄り添ってくる          ・・・











最後に会った時に、クラウドが言った。
彼女を感じようと思えば感じられると。
例えばそれは。
真っ青な空を見上げた時とか、 小さな花が風もないのに揺れている時とか。
泣きたくなったり、笑いたくなっり。
何も考えてなかったり、考えすぎていたり。
喪失感に愕然としていたり、後悔したり。
そんな瞬間。
そんな刹那に。
不意に強く感じることが出来るのだと。
・・・それじゃオイラにはよくわからないと文句を云うと
『俺にもよくわからないからな』
と困ったように空を振り仰いでたっけ。



なぁ、オイラはみんなの中で一番長く生きてきたけど。
本当に本当に長く生きてきたけど。
あの時のクラウドの言葉はよくわからないんだ。

彼女を喪った後のクラウドはみてられなくて。
それでもクラウドは何故か時折、 彼女の存在を感じることがあって。
辛いだろう?って訊くとただ首を振っていた。
そうしてもっと時間(とき)を経たら、 クラウドは今度はとても、穏やかになった。
やっぱりまだ感じていられるの?と訊けば。
信じられないくらい優しげに微笑んだ。

こんな風にクラウドが生涯感じ続けた、 彼女との繋がりを。
なんて表現したらいいのか、オイラには本当にわからない。
彼女はこの星の一部になったんだろうか?
残留思念がずっとクラウドを支えていたのだろうか?

生まれて、消えて、遺(のこ)って、継いで。
人の生命(いのち)は複雑で不可解なような気がして。
鼻の奥がつんと痛くなるから、オイラは考えるのを止めてしまって、 クラウドの言葉を理解できないんだ・・・・・・











「我が子達よ」
「わたしの残りの寿命も少なくなった」
「だから、往(ゆ)こうと思う。
 予(かね)てからそこで尽きようと考えていた」

オイラの言葉を子ども達は尻尾を垂れながら、聴いていた。
そうだ。
オイラは動ける内に、辿り着こうと思う。
あの、忘らるる都へ。
おそらく最も彼女に近しいであろう場所へ。

還ろうと、思う。


脚は、まるで若返ったかのように軽やかだった。
肉球に吸い付く大地の感触がこそばゆかった。
オイラは群れを離れて独りになったはずなのに。
嬉しくて楽しくて。
まるで唄いだしてしまいそうで。

オイラは、帰る。
オイラは、還る。
・・・みな、還り着いた、その場所へ。










オカエリ
オカエリ
マタアエタネ

オカエリ



オカエリ・・・・・・・・・








かつてあった、ひとつにもどる。
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