それは、遠い遠い記憶だった。

光りの海が、あった。

それは、星の生命の煌めきだった。



微かな、わたしの中に流れるその血が





記憶していた――――――・・・・・・








彼女と出逢ったのは、偶然だったのだ。
父(本当は養父なのだけれど)の仕事の都合で七番街スラムに来ていた。
ミッドガルの外に居を構えるわたし達親子にとって、 そこは暗く、汚い、そして物騒な街だった。

けれどその街で、彼女は花を売っていた。

大きなピンクのリボンが揺れて、印象的だった。
暖かな色をした、長い巻き毛が綺麗だった。
透き通った声で、楽しそうに売っていたのが・・・可愛かった。
わたしは近づいていって、彼女に声を掛けた。

「そのお花、くれる?」

振り返って、笑った彼女の名は『エアリス』と言った。







!!」

細い腕を振って、エアリスが応える。
わたしは父が仕事でミッドガルに滞在している間、時間があれば 彼女と過ごした。
まるで幼馴染みのように、仲のよい友達だった。

そう。

あの、

瞬間まで―――――――






七番街を支えるプレート支柱が爆破され、呆気なく街は壊滅した。
エアリスのことが心配で彼女の家にまで訪ねていって、 彼女の育ての母親である、エルミナさんに会った。
神羅といろいろ揉めた後に、彼女は旅に出たという。
詳しい理由はエルミナさんにも解らないようだった。

けれど、話を聞いている内にわたしはついこの間の、エアリスの 言葉を思い出していた。

『あのね
『何?』
『昨日、初恋の人によく似た感じの人に会ったの』
『初恋って・・・ザックスに?』
『うん』
『なによ〜、照れ笑いしちゃって!!』
『えへへ・・・だってね、お花買ってくれたの。
 嬉しかったなあ』
『・・・買わせたんじゃないの?』
『え?あはははは・・・』

ビジョンが、点滅する。
会ったこともない、金の髪の青年が、エアリスと交互に。

そうか。
あなたは、『彼』と居るんだね。
あなたに科せられた、あなたが求めた、
これは選択・・・・・・だったの?。






その瞬間を、どう言い表せれば良かったのだろう。

初め、頭の中心に強烈な疼きを覚えた。
そしてぐるぐると回り出す、視界。
激しく上下する鳩尾(みぞおち)に蹲ってしまう程の痛み、痛み。
それから、それから・・・ああ!
わたしは泣いたのだ。
心が感じ取る前に、涙が、溢れて。
溢れた涙が、胸元を濡らして、カーキ色のシャツに不様な染みを作って。
・・・ようやくあなたがこの世界から 失われたことを理解したのだ。





その時、初めて視たの。



あの輝きの海を。



生命(いのち)を呑み込み、生命を吐き出す―――『ライフストリーム』。

これは、遠いわたしの記憶。
これは、あなたの現在(いま)。

やっと、やっと気付いたんだよ・・・エアリス。
本当に微かだけれどわたしはあなたと同じ血を持っている。



ね?そうだったんだね?






とにかく一番近い魔晄炉から、わたしは意識を飛ばすことに成功した。
まだ、間に合う。
そう思ったからだ。
まだ、エアリスに間に合う。



目も開けていられないような眩しさの中でわたしは必死に彼女の存在を探した。
愚図愚図していたらわたしの意識も『ここ』と渾然としてしまう。

(エアリス)
(エアリス)
(どこ―――?)



ちりっとわたしの意識が瞬間熱くなった。
その、ほんの僅かちりちりと灼ける感覚に逆らわずに集中する。

(・・・・・っ・・)
・・・っ!!)



見つけた。
見つけたよ!エアリス――――!!



「どうして?どうしてこんなトコにいるの?!?」
蒸気が固まってやがてそれが色づいていくように、彼女は姿を顕わした。
目を赤くして・・・泣いてるの?

エアリスはふわふわした長い巻き毛を小さく揺らして それから合点がいったように頷く。
「ううん、言わなくていいよ
 解った。
 あなたも・・・古代種だったんだね」
「あは・・・そうみたい。
 でもあなたよりもずうっと薄いし、力も弱い。
 だけど良かった!あなたを見つけることが出来て」

真っ白で細い彼女の腕がわたしに伸びてきて。
甘やかな花の香りと共に抱きしめられる。
ああ、落ち着く。あなたの、体温。

「ね、エアリス。
 好きな男性(ひと)、出来たんだよね?」
わたしの肩に埋めてた小さな顔を上げて。
ああ、真っ赤だよ?
「やだ・・・そんなことも解っちゃったの?」
わたしは彼女の両手を取って、これまでで一番優しい顔をしてみた(そう、思ってる)。

「うん。
 だから、還ろう。ね?」
きらきら、碧の瞳が大きくなって。
「どう―――やって?」
「出来るよ、わたしとあなたが居れば。
 多分、わたしの中の古代種の力は全部使っちゃうと思うけど。
 ・・・いいよ、元々薄いしね」
不器用に片目を閉じて、笑ってみせる。
さあ、あなたも笑って。エアリス。



エアリスはいつもの、小首を傾げる癖をわたしに見せて・・・笑った。



「ありがと、。  大好き・・・・・・!」















「―――!」

部屋の中に入ってきたわたしの気配に気付いて、エアリスは 真っ白なドレスを翻した。
「おめでとう、エアリス。とても綺麗だよ」
淡い色合いのブーケとブートニアを手渡して、わたしはエアリスの隣の椅子に 腰掛けている青年の顔を見遣る。
「どう?綺麗?」
「ああ、とっても」
ブートニアを手にとって、彼は照れたように笑う。
薄青の瞳がとても優しい光りを湛えている。
「違う、違う。
 花嫁だよ!」

ぼんっと音がしたと思うくらい真っ赤に染まった彼を見て、 わたしとエアリスは大声で笑った。



こんな風に、笑えるなんて。

素敵だね。




きっちり化粧を施されたエアリスの表情はまるで小さな女の子みたいで。
「これ、あなたに投げるから。
 ちゃんといい人を捕まえてね?」

小首を傾げて、小花の咲くブーケを揺らして

あなたは笑った。


相も変わらず、苦しいタイトルですね(爆)
まあ、「笑って、笑って!」くらいで・・・・(おい)
ところでクラウドはどこって感じなんですが
とにかくエアとゴールインしたからよし!ってことで(^^;
・・・いいですか〜v御子神さん ヾ(・・;)ォィォィ
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