カラン、カラン、カラン

「おめでとうございます!!
 常夏の地、コスタ・デル・ソル、二名様!
 豪華ホテルスイートに三泊四日!!
 大当たり〜〜〜!!!



・・・アイスバー、一本で、こんな豪華な景品が当たるとは思わなかった。
俺はぽかんと口を開けながら、カラカラと振られるベルの音を聞く。

豪華ホテルか・・・貧乏な俺にはなかなか泊まることの出来ないホテルだろうなあ・・・、
しかもスイート!!お高い部屋だ!!
二名・・・二名・・・ふたりで!?

瞬間俺は素早く辺りを見渡し、知り合いが居るか居ないかを確かめ、 まだしつこくベルを振る商店街代表の親父から、さっさと招待券を頂くと 疾風の如く駆け出した。
こんな美味しい話をユフィやナナキやケット・シーなんぞに聞かれたら、 先ず以てアイツらは邪魔しに来るに違いない!
俺とエアリスの蜜月を、そんな輩にぶち壊されるわけにはいかない。
極秘で事を運び、エアリスとふたりきりで、

夢のスイートだ〜〜〜〜〜〜〜!!

エアリス、君も喜んでくれるだろう?
俺は息せき切りながらも、ルンルン気分でぶっ飛ばしていた。
と、いきなり目の前に疾風が起こる。
「む!?これは!!」
ひゅるるるる・・・・木の葉がひらりと舞い落ち、公道のど真ん中で ユフィが腕組みしながら立ちはだかった。
「ふっふっふっ・・・、全て聞いていたわよ?クラウド!!」
「・・・さすがだな、ユフィ」
「夢のリゾート地にまさかエアリスとふたりきりで、 なーんて虫のいいこと考えてんじゃないわよねええ?
 苦楽を共にしたあたし達のこともじゅうううぶん考えていてくれるわよね?」

ユフィの黒い瞳が油断なく煌めき、俺はじりじりと後退りながら、間合いを広げようとする。
「ああ。勿論だとも、ユフィ!
 このチケットは換金して皆で美味しい物を食べよう・・・」
渾身の力で俺はジャンプした!
同時にぶあっとユフィの不倶戴天が宙を斬る。
がっと俺の踵を掠めたが、不倶戴天は虚しく舗装された道を破壊したのみだ。
「・・・なんて言うわけないだろう!!」
俺は捨て台詞を残し、再び全速で走り始める。
おのれ〜〜〜!クラウド!!
武器を振り回したせいで、体勢が整うのが遅れ、ユフィは歯噛みして悔しがった。
済まない、ユフィ。
そういえば俺たちここの所ろくな物も食べてなかったよな。
でもこれは俺とエアリスの為なんだ、諦めてくれ。

誠心誠意、心の中で謝りながら、俺はエアリスの居る安ホテルへと急いだ。



ぴ!ぴピピびびっ!!がちゃがちゃガキガキン!!ドガガッ!!

キーロックの解除ももどかしく、俺はドアを壊すんじゃないかという勢いで 宿泊している部屋へ転がり込んだ。
エアリスとティファが驚いて振り返る。
「ど、どうしたのよクラウド!?
 何か急用?」
ティファがやれやれと首を振りながら訊ねた。
エアリスはまだ瞳を丸くして俺を見ている。
どうやらティファに刺繍を教わっていたらしいが、そこにあるのは どう見ても刺繍糸のお団子だった。
「き、急用ってわけじゃあないんだけど・・・」
しどろもどろで、どう切り出そうかと悩んでいたら、ティファが目敏く俺の手に しっかりと握られているチケットを発見した。
「あら?それなあに、クラウド?」
しまった、と俺はチケットを隠そうとしたが、透かさずティファのボディブローを 喰らってしまった・・・!!
「うげ!!」
「あーら、ごめんね。
 隠そうとするからつい反射的に・・・」
「すごいわ・・・ティファ」
エアリス。
ティファの技に感心する前に、俺を心配してくれ。
ちょっぴり凹んで隙が出来ているところへ、ティファが電光石火で俺とエアリスのスイートチケットを 取り上げる。
「あ、こら!
 ちょっと待て・・・・・・」

コスタ・デル・ソルの豪華ホテルスイート招待券!?

「え、いやだからそれは俺とエア・・・」
まああvクラウドvv
「へ?」
事情も説明しない内からエアリスが、瞳をきらきらさせながら嬉しそうに微笑んだ。
さすが、エアリス。
以心伝心で俺の気持ちを解ってくれたのか―――\(^O^)/
「随分手回しが良いのねvv
 どんなプレゼントが良いのか悩んでたのよ。
 こんな素敵なプレゼントなら、ケット・シーもきっと喜んでくれるわ!!」

・・・はい?

ケット・シー!?

ど、どうしてここにケット・シーが出てくるんだ!?
凄まじい心の嵐を抱えながら、俺はげんなりとティファの方を見た。
ティファが、どうやら俺の様子でエアリスが激しく勘違いしたことを悟ったらしい。
困ったように、小声で俺に囁く。
「もうすぐケット・シーの・・・、いえリーブさんの結婚記念日なんですって。
 偶然昨日解って、さっきエアリスと何かお祝いしましょ、って盛りあがってたの」

じょ、冗談だろ・・・

がくりと跪いた俺の顔を覗き込むように、エアリスが膝を屈めた。
「どうしたの?」
嬉しそうに、ニコニコしながら。
そんな可愛い顔されたら、本当のことは言えやしない。
アンタは結構お祭り好きだしなあ。
「・・・何でもないさ。
 それよりも気に入ってくれるかな?ケット・シー」
「うん、わたしもすっごく気に入った!!」
ふわっと、綺麗に綺麗に微笑む。
ああ、そんな笑顔見せてくれたんだから、俺の哀しみは深い深い海溝へ沈めよう!エアリス!!
・・・ティファも、仕方ないわね、と肩を竦めて笑った。

ダン!!

再度勢いよくドアが開いて、肩を大きく上下させながらユフィが飛び込んできた。
「このっ・・・」
叫ぼうとして、ふとティファの手の中のチケットに気付く。
「あれ!?それ・・・」
「クラウドからケット・シーへの贈り物よ」
「へ!?」

事情が呑み込めるにつれて、ユフィがどんどん俺に憐れみの視線を向けてきた。
お前に憐れんでもらっても、俺は嬉しくないよ。
「・・・クラウド、あんたって相変わらずなのね」
ふう、と溜息をついてユフィはにやり、とした。
「よし!とっておきの情報を教えてあげるわ」





ひゅ〜 どん!どん!!

空へ打ち上げられた花火が、色鮮やかに拡散して、名残を惜しむように 消えてゆく。
俺たちの目の前の湖面に、その様子はつぶさに反射されて。
同時にふたつの花火が咲き誇る様を、心ゆくまで楽しむことが出来た。
「すてき・・・」
うっとりとエアリスが呟き、俺を見上げる。
「ああ、こんな穴場を教えてくれたユフィにお礼を言わないと」
常日頃は困ったちゃんだが、たまに優しい気遣いをしてくれる彼女に、俺は心から感謝した。
でもやっぱり迷惑を掛けられる方が多すぎるけどな!

ひゅるる・・・・・・どん!!

蒼い閃光が、エアリスの瞳に反射した。
風が吹き抜けて、彼女の長い髪が広がる。
「・・・・・・」
隣りに座っている彼女の細腰を引き寄せて、少々乱暴に口付けた。

どん!

今度は鮮やかな紅色の花が、空と水とで輝いて。
俺たちを薔薇色に染め上げる。
やっと唇を離して、真っ赤になった彼女の頬を俺は両手でそっと包んだ。
「・・・今度は君をスイートルームに招待するよ」
碧の瞳が、揺らめいて。
「クラウドったら」
軽く俺の胸を叩き、俯いて。
俺はもう一度、彼女の顎を持ち上げて、その柔らかい唇を貪ってゆく。

甘い唇。
甘い時。
甘い、甘い。
甘くて、俺の内側が。

とろける。











「どうしたの、シド?」
「・・・クラウドに飛行船の燃料の買い付けを頼んだんだが、どうも粗悪品を掴まされたらしい。
 まったくあいつはどこか抜けてるな」
「そ、そう」
「どうしたんだ?ティファ」
「い、いいえー、ほほほほ・・・」

豪華ホテルのスイートルームの宿泊費は高い!
ケチるところは決定的にケチらないとな!!

待っててくれ、エアリス―――!!


つっぱしりすぎです、クラウド(^^;
しかもケット・シーって所帯持ちですか!?

こ、このようなもので少しはリクに添ってますでしょうか・・・?(O.O;)(oo;)
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